実験機器紹介
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試験車両

当研究室では,自動車の実路走行時における排出特性やドライバーの運転挙動を高精度に解析するため,普通乗用車を実験車両として活用している.研究室の関係者が主に運転を行っている. 現在はガソリンエンジン車1台およびディーゼルエンジン車1台の計2台を所有し,走行実験や排出ガス計測に用いている.
実験時には後部座席を倒し,トランクスペースに各種計測機器を搭載できるよう車内をレイアウトしている. 具体的には,可搬型排出ガス測定装置である PEMS・miniPEMS,走行データを取得するデータロガー,高精度GPS計測が可能な V-BOX などを車載し,速度・加速度・エンジン挙動・排出ガス成分など多様なデータを同時に取得している. さらに排気管(テールパイプ)にはNOxセンサーや熱電対(熱電対センサー)を設置できるようにし,排出ガス成分および排気温度をリアルタイムに計測できる構成としている.


mini PEMS

PEMS (Portable Emission Measurement System) の一種で,従来型に比べ小型軽量であり,設置が容易であるという特徴がある.そのため,様々な車両を使用して試験を行うことができる. テールパイプから専用のチューブを通じて本体に排出ガスを導入し.排出ガス中の水分を除去したうえでNO, CO, CO2などの濃度を同時計測する. mini PEMSで計測された濃度は水分を除去した後の濃度であるため,実際よりも高い値が計測される.そのため,排出ガスの空気過剰率から理論的な水分濃度を計算し,実際の濃度に換算を行っている. 計測した濃度データはNOxの排出ホットスポットの解析や,NH3の濃度を計算する際に使用される.

(参考文献)

・Sokken, "統合ポータブルエミッション測定システム 3DATX parSYNC FLEX", https://www.sokken.co.jp/gas/202305/entry678.html
・S. Sato, S. Abe, R. Himeno, T. et al., “Real-World Emission Analysis Methods Using Sensor-Based Emission Measurement System,” SAE Technical Paper 2020-01-0381, 2020


PEMS

車載型排ガス計測装置(Portable Emission Measurement System)で,車両の路上走行による排ガス試験に用いられる装置. 排ガス成分濃度(CO, CO2, THC, NOx, NO2), 空燃比, 排ガス流量, 位置情報, 環境条件(温度, 湿度, 大気圧) のデータ採取とマスエミッション演算が可能である. 実路においてリアルタイムで,より現実的な運転挙動を反映したデータを取得できることが特徴である.
現在は走行中に車両の制御情報を取得するOBD通信ユニットとして活用している.

(参考文献)

・HORIBA, "OBS-ONE GS", https://www.horiba.com/jpn/mobility/products/detail/action/show/Product/


NOxセンサ

テールパイプ付近に装着して排出ガス中のNOx+NH3濃度,O2濃度を計測する. ジルコニア式NOxセンサはその測定原理から,排出ガスに含まれるNOxとNH3濃度をNOx濃度として計測してしまう. そのため,本研究室ではこの特徴を利用して排出ガスに含まれるNH3濃度の計測に取り組んでいる. そのほか,計測したO2濃度から触媒通過後の排出ガスの空燃比を計算して出力することもできる.

(参考文献)

・ATI Worldwide LLC, "排ガスセンサー:ジルコニア式NOxセンサー 『NOxCANt』", https://pr.mono.ipros.com/accuratetechnologies/product/detail/2000408822/
・S. Sato, J. Chen, C. Eang, K. Tanaka, T. Tange, “Effects of Different Driving Behavior during Actual Road Driving on Ammonia Emissions from Gasoline Vehicles”, SAE Technical Paper 2023-32-0095, Aug. 2023.
・山本 敏朗, 鈴木 央一, 柴﨑 勇一,"ZrO2型NOx センサを用いた重量車排出ガス測定システム(SEMS)におけるNOx 濃度測定性能の向上", 自動車技術開論文集,2022 年 53 巻 1 号 p. 170-176


ブレーキ踏力計

ドライバのブレーキ操作を計測するための機器.実験車のブレーキペダルに直接取り付ける. 10ヘルツで計測される金属板のひずみから,ドライバーのブレーキ踏力を計算している. ドライバの運転操作予測モデルの構築や運転意図把握,エミッション解析などに用いられる.


車両シミュレーションモデル

車速と道路勾配に基づいて, エンジン回転数やエンジントルク等の車両の状態を計算する車両シミュレーションモデル. 本モデルは物理モデリングに適したソフトウェアであるOpenModelicaで実装されている. モデルを構成するパラメータは, 試験車両を用いた各種試験で取得したデータに基づいて調整され, 実際の試験車両の挙動を再現することが可能である.

(参考文献)

・OpenModelica, "Introduction", https://openmodelica.org/


車間距離計

先行車と自車それぞれに高精度GPS装置を搭載し,車間距離を計測するためのシステム. 使用しているGPSはRTK方式で,位置測位精度は約2 cm. 取得された緯度・経度をもとに,両車間の距離をリアルタイムに算出している. また,位置情報をもとに各車両の速度や加速度も計測可能.
RTK方式では,国土地理院の電子基準点から補正情報を受信することで,通常のGPSより高精度な測位を実現している. 本システムは,車両追従時の各種データ解析に使用される.

(参考文献)

・VBOX Automotive, "VBOX Sigma", https://www.vboxautomotive.co.uk/index.php/en/products/data-loggers/vbox-sigma
・VBOX Automotive, "Telemetry Interfaces", https://www.vboxautomotive.co.uk/index.php/en/vbox-telemetry-interfaces


データ記録装置

高精度GPS装置により取得した自車位置や車間距離,ブレーキ踏力計により取得した踏力,NOxセンサにより取得した排出ガス中のNOx濃度等のデータを記録するための装置. 記録したデータは,PCにインストールされた専用のアプリケーションを用いてcsvファイルとして出力され,解析に使用される.

(参考文献)

・KEYENCE, "データロガー", https://www.keyence.co.jp/products/recorder/recorder/